MMAとは何の略?
三菱レイヨンが英企業を買収して社運をかける3文字
MMAとはメタ(ア)クリル酸メチル(英文名、メチルメタアクリレイト)のことで、アクリル樹脂や化学品の原料になる化学物質だ。
製品は透明性や耐久度にもすぐれており、リサイクル性も高い。自動車部品、ITパーツなどへの用途拡大が大きく期待できる。最近では写真のような水族館の巨大な水槽にも数多く使用されていておなじみだ。その他大型テレビなどの家電製品、塗料、また改質剤としても有望な市場を持ち、「プラスティックの女王」とも呼ばれている。現在の世界市場規模は年間約210万トン、7年後の2015年には380万トンにまで拡大すると予測されている。
このほど、三菱レイヨンは、このMMAのモノマー(分子結合させる重合工程以前の単量体)の技術にすぐれ、世界シェア約25%を持つ英国「ルーサイト」社の全株式を取得すると発表した。
ルーサイト社は特にモノマー系の技術にすぐており、ポリマー(重合)系の技術にも優れている三菱レイヨンとの統合により大きなメリットがあるとしている。またアジア市場に強い三菱と欧米市場に強いルーサイト社との補完により営業展開のグローバル化も促進される。統合により世界市場でのシェアの35%以上を獲得できるという。 また今回の製造技術は石油化学市場に豊富なエチレン原料を使用しているため、同社も保有している従来からの2つの工程方式(青酸系とイソブチレン系)用の原料が世界的なアクリル繊維などの不況による品薄感や手配の困難さから逃れやすいとも説明している。
ともあれ資本金532億円、年商4,185億円の三菱レイヨンが、、1,600億円もの買収資金を投じてM&A(買収、合併)を断行するのは「社運をかける」(同社鎌原正直社長談)ほどの大きな挑戦だ。この統合により三菱レイヨンの売上げは年間約6,000億の規模となり、同社の1兆円構想への大きな弾みとなる。
1960年代ころからアクリル繊維「ボンネル」で一世を風靡した同社だが、その後の経過は先発ポリエステルにも押され合繊系メーカーとしては決してトップランナーではなかった。だがかってのアクリル系の基礎技術の伏流を生かした今回チャレンジには大きな期待が高まる。
戦前からの財閥三菱グループの一翼を担う同社、今回のM&Aには,東京三菱UFJ銀行の資金バックアップを始め三菱グループ全体からの熱いまなざしも感じられる。そういえば東レや帝人と違い、1952年の社名改称以来「レイヨン」(「レーヨン」ではない!)の社名にこだわって来て、略称化すら無かった同社だが、化学メーカーへの体質変化も踏まえて社名変更の動きはないのだろうか?。